ミュージアムカフェ「桃の樹」

ミュージアムカフェ、ショップのコンセプト・デザインを担当された堀様の原案を元に、そのイメージに沿うように技巧的な表現をしました。御用命を頂いたのはカフェの壁面に施される岡山の「桃」を想起させる淡い桃色のグラデーションを和紙によって表現する造作と背景の墨絵でした。

こだわった部分は和紙を50種類ほど買って墨色の効果、潤渇の表現、色彩の発色具合を試してみたところです。手前に配置されているパイプの棒はもとの色は透明だったので、その透明感を損なわないよう最も薄手の富士楮紙という修復などにも用いられている和紙を使用しました。和紙のグラデーションは一枚一枚噴霧器と刷毛を用いて染色したのですが、薄手の和紙を染色できる無風で床を汚せる巨大な空間が無かった為、兄が育てている蜜柑の温室の中で染色し、植物をピンクに染めてしまったことをこの場を借りてお詫びします。

壁面の絵も10メートルの和紙を広げられるスペースを探し求めた結果、山岳地帯の車通りの少ない路上で描きました。鶯の鳴き声を聞きながら非常に心地良い空間の中、作画する機会を与えていただき感謝しております。

FAN美術館、そしてミュージアムカフェの「桃の樹」、是非足を運んでご笑覧頂ければ幸いです。

FAN美術館 理事
小勝のぞみ
国立台湾芸術大学博士課程修了
芸術学博士 書家